昨今の急速なAIの利用に伴いデータセンターの建設が全国規模で進められている。データセンター内にはサーバを収納するラックが並び、ネットワーク機器を設置するスペースも設けられている。また、同施設には、インターネットなど外部と接続可能な高速回線、冷却装置、電力インフラなど、サーバ設置に必要な設備が整えられている。
サーバには、高性能な半導体チップ(GPU、TPU)が搭載されている。AIに質問を投げかけると、半導体チップに実装されたAIモデルが演算処理を行う。AIモデルは、事前学習されたデータと、リアルタイムにウェブから収集した最新情報を組み合わせて演算を実行する。情報処理には高度な自然言語処理技術が使用され、最終的にAIが文章や画像を生成して利用者に対し応答する。
2022年時点で約460 TWhであったデータセンター関連の全世界における電力需要は、2026年には最大1,050 TWhに達すると国際エネルギー機関(IEA)が試算している(図1)。この数値(1,050 TWh)は、日本全体の電力需要に匹敵し、需要急増の主要因は生成AIの利用拡大にある。特筆すべきは、生成AIの登場以前と以後で、データセンターの電力需要が数倍に増えていることである。

図1 データセンター関連の全世界における電力需要推移と見通し*1
AIの消費電力を削減する方策は、「ハードウェアの最適化」、「ソフトウェアの最適化」、「インフラストラクチャの改善」の3つに分類される。「ハードウェアの最適化」とはAI演算処理に特化したGPUの開発である。「ソフトウェアの最適化」には、ニューラルネットワークの認識精度を保ちつつ計算量とメモリ容量を削減するアルゴリズム開発(AI軽量化技術)が含まれる。「インフラストラクチャの改善」では、絶縁性液体(冷媒)にサーバを丸ごと浸し発熱機器を冷却する「液浸冷却」が挙げられる。これらの方策を取り入れた既設データセンターの改修や省エネ型データセンターの新規建設が世界各国で進められている。
第7次エネルギー基本計画では、再生可能エネルギーと原子力発電を「脱炭素電源」と位置付けて最大限活用する方針である。この基本計画における2040年度のエネルギー需給見通しでは、発電電力量は約1,200 TWh(1.1~1.2兆 kWh)であり、電源構成は、火力:3~4割程度、再生可能エネルギー:4~5割程度、原子力:2割程度との内訳である(図2(b))。2022年度実績(図2(a))に対し、化石燃料の使用を半減させ、再エネの利用を2倍以上にして脱炭素化を推し進める計画である。

図2 2022年度実績と2040年度における発電電力量の見通し(日本)*2
2040年頃には省エネ型データセンターが国内普及しているが、AIはその利便性から日々のあらゆる活動にますます浸透していき、AIの多用が電力需要を押し上げることも十分に予想される。積極的な再エネ利用を描く国家の電源構成が大きく変わることがないよう、AIがもたらす明るい未来社会に期待を寄せつつ、低環境負荷につながるAI技術の開発動向にも関心をもっていきたい。
*1 出所:“Electricity 2024” IEA 2024年1月24日を元に弊社作成
https://iea.blob.core.windows.net/assets/18f3ed24-4b26-4c83-a3d2-8a1be51c8cc8/Electricity2024-Analysisandforecastto2026.pdf
*2 出所:“2040年度におけるエネルギー需給の見通し” 資源エネルギー庁 2025年2月を元に弊社作成
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20250218_03.pdf