今日味新深(No.4:2010/2/1)
現在の電力系統が50Hzまたは60Hzの交流で送電されていることは,ご存知のとおりですが,数年前から直流送電が見直される兆しがあります。
もともと送電に交流が使われるようになったのは,1880年代のエジソンとテスラによる電流戦争と呼ばれる技術競争にテスラが勝利してからです。交流送電のメリットは,発電機が交流であることと,トランスで容易に電圧を変えられることでしたが,最近のパワーエレクトロニクスの進歩により,電圧変換といった直流の欠点が問題にならなくなってきました。
一方,交流では送電距離が数百kmまでが限界であること,海中を高電圧送電できないこと,電力系統の消費量にあわせて発電量を調整しないと周波数を一定に保てないことなど,原理的な制約が表面化しつつあります。
このような技術的な背景もあり、直流送電はヨーロッパで海底送電線に採用されたのを契機に,世界中で採用されだしており,日本でも津軽海峡および紀伊水道において直流送電が採用されています。
最近では,中国で1,000km以上の長距離用に直流送電が採用されました。さらに,ヨーロッパの地中海側,北アフリカから中東にかけてのサンベルト地帯と呼ばれる日照時間の長い地域に,大規模な太陽光・太陽熱発電所を建設して,電力をヨーロッパに直流送電する計画が検討されています。
直流送電で数1,000km~10,000kmの送電が可能になると,地球規模の電力系統が形成され,現在の石炭・石油・天然ガス等の燃料の輸入だけではなく,電力そのものを輸入するという時代が来るかもしれません。